○堺市がん対策推進条例

平成24年9月27日

条例第48号

がんは、市民の疾病による死亡の最大の原因であり、今日その対策が市民の生命及び健康にとって重大な問題となっている。

がんとなって闘病することや不幸にしてがんによる死を迎えることは、個人の問題から事業者、行政及び地域にとっても切実な問題として捉えられるようになってきている。

このような現状に鑑み、子どもの頃から健康的な生活習慣を身に付け、がんに関する知識を深め、がんの予防や早期発見に努めるとともに、たとえがんに患したとしても、社会での役割を果たすことができ、人権が尊重され、お互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会を実現するため、市民総ぐるみによるがん対策の推進に取り組むことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、がん対策基本法(平成18年法律第98号)の趣旨を踏まえ、市のがん対策に関し、市、保健医療関係者、事業者及び市民の責務等を明らかにし、市のがん対策に関する施策の基本となる事項を定めることにより、がんの予防及び早期発見に資するとともに、科学的な知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を全ての市民が受けられるようにするための総合的な施策を推進することを目的とする。

(市の責務)

第2条 市は、国、大阪府、医療機関、医療関係団体並びにがん患者及びその家族等で構成される団体その他の関係団体との連携を図りつつ、がん対策推進に関する計画に基づき、地域の特性に応じた施策を策定するとともに、当該施策を実施する責務を有する。

2 前項の施策は、がん医療等(がんの予防及び早期発見の推進並びにがん医療をいう。以下同じ。)のほか介護、福祉、教育、雇用等幅広い観点からの検討を踏まえて策定されるものでなければならない。

(保健医療関係者の責務)

第3条 保健医療関係者(がん医療等に携わる者をいう。以下同じ。)は、市が実施するがん対策等に関する施策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるとともに、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながんに係る医療を提供するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第4条 市内において事業活動を営む者(次項において「事業者」という。)は、従業員及びその家族(以下「従業員等」という。)に対するがんに関する正しい知識の普及に積極的に取り組むとともに、従業員等が定期的にがん検診を受けることができる環境の整備に努めなければならない。

2 事業者は、市が実施するがん対策に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、喫煙、飲酒、食生活、運動その他の生活習慣及びウイルス等の感染が健康に及ぼす影響等がんに罹患しやすくなる要因を排除するための正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、市が実施するがん対策に関する施策に協力し、定期的にがん検診を受診するよう努めなければならない。

(がん情報の収集と提供)

第6条 市は、がんの罹患、死亡等がん対策に資する情報を収集し、分析するための取組等必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、関係機関と協力し、市民に対して、がんの予防及び早期発見、がん医療並びに患者支援に関する適切な情報の提供に努めるものとする。

3 市、関係機関及び市民は、がん対策に関する情報の共有化に努めなければならない。

(がん予防の推進)

第7条 市は、関係機関と協力し、がんの予防に資するため、次の各号に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 喫煙、飲酒、食生活、運動その他の生活習慣及びウイルス等の感染が健康に及ぼす影響等がんに罹患しやすくなる要因を排除するための正しい知識の普及啓発

(2) 科学的知見に基づくがん予防の効果が見込まれる予防接種を普及させるための施策

(3) 受動喫煙(人が他人の喫煙によりたばこから発生した煙にさらされることをいう。)を防止するための施策

(4) 医療機関における喫煙者に対する禁煙支援及び生活習慣の改善のための指導の実施に対する支援

(5) 教育機関におけるがん予防につながる学習活動の充実

(6) 前各号に掲げるもののほか、がん予防のために必要な施策

(平30条例54・一改)

(がんの早期発見の推進)

第8条 市は、関係機関と協力し、がんの早期発見に資するため、有効性の確立したがん検診システムの構築を目標として、科学的根拠に基づくがん検診を計画的に実施することとし、次の各号に掲げる施策を推進するものとする。

(1) がん検診の実施体制の充実

(2) がん検診の受診率向上のための施策

(3) がん検診を受診する機会を確保するための施策

(4) がん検診精密検査の体制の確立

(5) がん検診の精度管理体制の充実及び精度管理指標の公表

(6) がん検診に携わる医療従事者の資質の向上を図るための研修の機会の確保

(7) 前各号に掲げるもののほか、がんの早期発見のために必要な施策

(がん医療の推進)

第9条 市は、大阪府及び専門的ながん医療を提供する医療機関と連携し、がん患者が等しくがんの病状に応じたがん医療を受けることができるよう、在宅医療を含めてその環境整備に努めるとともに、質の高いがん医療を提供するため、次の各号に掲げる施策の推進に努めるものとする。

(1) 厚生労働大臣が指定する地域がん診療連携拠点病院との連携

(2) 大阪府が指定する大阪府がん診療拠点病院との連携

(3) 前2号に掲げる病院とその他の医療機関等との役割分担及び連携

(4) がん患者の意向を踏まえ、住み慣れた家庭や地域での療養を選択するため、医療及び介護の提供体制の整備並びに地域包括支援センター等関係機関との連携

(5) 継続した医療、看護及び介護を提供するための地域連携クリニカルパスの普及並びに推進に必要な関係機関との連携

(6) 前各号に掲げるもののほか、がん医療の推進のために必要な施策

(緩和ケアの推進)

第10条 市は、大阪府等と連携し、がん患者の身体的若しくは精神的苦痛又は社会生活上の不安その他のがんに伴う負担の軽減を目的とする医療、看護、介護その他の行為(以下「緩和ケア」という。)の充実を図るため、次の各号に掲げる施策の推進に努めるものとする。

(1) 緩和ケア病棟、緩和ケアチーム及び緩和ケア外来の整備

(2) 緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の研修

(3) がんと診断された段階からのがん患者の状況に応じた緩和ケアの推進

(4) 緩和ケアに関する専門医療機関並びに緩和ケアに係る関係者及び団体との連携協力体制の整備

(5) 在宅において緩和ケアを受けることができる体制の整備

(6) 前各号に掲げるもののほか、緩和ケアの推進のために必要な施策

(女性特有のがん予防の推進)

第11条 市は、女性に特有のがん(女性に多いがんを含む。以下この条において同じ。)対策に資するため、次の各号に掲げる施策を推進するものとする。

(1) がんに罹患しやすい年齢を考慮したがんの予防に関する正しい知識の普及啓発

(2) 女性に特有のがんに係る検診の受診率の向上のための施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、女性に特有のがん対策を推進するために必要な施策

(がん登録の推進への協力)

第12条 市は、大阪府が実施する地域がん登録の推進に協力するものとする。

(がん患者等への支援)

第13条 市は、がん患者の療養生活の質の維持向上及びがん患者の身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安その他のがんに伴う負担の軽減に資するため、医療機関等と連携し、次の各号に掲げる施策の推進に努めるものとする。

(1) がん患者及びその家族等に対する相談体制の充実強化

(2) がん患者及びその家族等で構成される団体その他の団体が、他のがん患者等に対して、自らの経験等を生かして行う活動の支援

(3) 前2号に掲げるもののほか、がん患者及びその家族等の支援のために必要な施策

(堺市がん対策推進委員会)

第14条 がん対策の推進に関する重要事項について、市長の諮問に応じて調査し、及び審議するため、堺市がん対策推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、必要があると認めるときは、がん対策の推進に関する施策の実施状況について調査し、市長に意見を述べることができる。

3 委員会は、委員20人以内で組織する。

4 委員は、次の各号に掲げる者のうちから市長が委嘱する。

(1) がん患者及び家族等で構成される団体に属する者

(2) 保健医療関係者

(3) 学識経験を有する者

(4) 関係行政機関の職員

(5) 前各号に掲げる者のほか、市長が適当と認める者

5 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。

6 委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

7 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営について必要な事項は、市長が定める。

(市民総ぐるみによるがん対策の推進)

第15条 市は、保健医療関係者、がん患者等で構成される団体その他の関係団体と連携し、総合的ながん対策を市民総ぐるみで推進するものとする。

(施策の見直し)

第16条 市長は、がん対策の推進に関する計画及び施策の実施状況について、定期的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第17条 市は、がん対策に関する各種施策を計画的に実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第18条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

この条例は、平成25年1月1日から施行する。

(平成30年12月26日条例第54号)

この条例は、健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号)附則第1条第2号の政令で定める日(その日がこの条例の公布の日前である場合にあっては、この条例の公布の日)から施行する。

堺市がん対策推進条例

平成24年9月27日 条例第48号

(平成31年1月24日施行)