○堺市環境基本条例

平成9年3月28日

条例第13号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 環境の保全と創造に関する基本的施策(第7条―第24条)

第3章 地球環境保全に関する施策(第25条)

第4章 堺市環境審議会(第26条)

第5章 雑則(第27条)

附則

人は、自然の恵みのもとで、生命をはぐくみ、様々な文化を築いてきた。

しかし、私たちに物質的な豊かさや利便性をもたらした社会経済活動は、一方で、資源やエネルギーの大量消費を伴い、環境への負荷を著しく増大させ、その影響は単に地域の環境にとどまらず地球の環境を脅かしつつある。

もとより、全ての市民は、安全で健康かつ快適な生活を営むことができる良好な環境を享受する権利を有しているとともに、健全で恵み豊かな環境を保全し、将来に引き継いでいく責務を担っている。

堺は、古くから人の営みにより、豊かな文化と多様な産業のもとに繁栄し、“自由”“自治”“進取”の気風をつくりあげ、多くの歴史的・文化的遺産と固有の風土を形づくってきた。

私たち市民は、環境が大気、水、土壌及び様々な生物の微妙な均衡と循環のもとに成り立っていることを深く認識し、環境を基調とした価値観に基づき行動する環境文化を築いていかなければならない。そして、市民が誇りうる都市として発展、成熟する中で、堺らしい風土を活かした豊かな環境の保全と健全な経済の発展を推し進めながら、先人たちから受け継いだこの気風を発揮し、環境への負荷が少ない持続的に発展することができる社会の実現に努めなければならない。

ここに、市民が参加し、連携し、協働することによって、人の営みと自然が共生し、魅力あふれる環境をはぐくむ“わがまち堺”をつくりあげ、これを次の世代に引き継ぐことを目指して、市民の総意としてこの条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境の保全と創造について、基本理念を定め、市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全と創造に関する基本的施策を定め、これを総合的かつ計画的に推進することにより、現在及び将来の市民が安全で健康かつ快適な生活を営むことのできる良好な環境を確保することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全と創造は、市民が安全で健康かつ快適な生活を営むことのできる良好な環境を確保するとともに、これを将来の世代へ継承されるように行われなければならない。

2 環境の保全と創造は、微妙な均衡を保つことによって成り立つ自然の生態系に配慮するとともに、自然環境を適正に維持し、向上させることによって、自然とのふれあいのある都市が実現されるように行われなければならない。

3 環境の保全と創造は、市、事業者及び市民がそれぞれの立場から自らの行動や事業活動を見直し、あらゆる社会経済活動その他の活動に、資源の循環的利用等環境への配慮を取り入れることによって、環境への負荷が少なく、持続的発展が可能な社会が構築されるように行われなければならない。

4 地球環境保全は、市、事業者及び市民の全てが、事業活動及び日常生活において環境に配慮した行動への参加を行うこと等により、積極的に推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に従い、環境の保全と創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施するとともに、市民及び事業者が行う環境の保全と創造に関する自発的な活動を支援する責務を有する。

2 市は、環境の保全と創造に係る広域的な取組を必要とする施策については、国及び他の地方公共団体と協力して、その施策の推進に努めるものとする。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念に従い、その事業活動を行うに当たっては、環境汚染の防止、自然環境の適正な保全、環境への負荷の低減等、環境の保全と創造に係る必要な措置を自主的かつ積極的に講ずるとともに、市が実施する環境の保全と創造に関する施策に協力する責務を有する。

2 事業者は、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

(市民の責務)

第6条 市民は、基本理念に従い、日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2 市民は、環境の保全と創造のための活動を自発的に行うように努めるとともに、市が実施する環境の保全と創造に関する施策に協力する責務を有する。

第2章 環境の保全と創造に関する基本的施策

(施策の基本方針)

第7条 市は、基本理念に従い、次に掲げる環境の保全と創造に関する基本方針に基づく施策を策定し、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 産業による環境汚染の防止、産業廃棄物の適正処理等の公害防止対策を推進すること。

(2) 自動車公害の防止、生活排水による水質汚濁の防止、一般廃棄物の適正処理、都市基盤施設の整備等により都市・生活型公害を改善すること。

(3) 魅力ある都市景観の創出、歴史的文化的遺産の保全及び活用等により快適な都市環境を創造すること。

(4) 自然環境を保全し、及び創造すること。

(5) 資源の循環的利用、エネルギーの効率的利用、廃棄物の減量等の省資源・省エネルギー対策を推進すること。

(6) 地球温暖化の防止、オゾン層の保護、公害防止技術の移転等により地球環境を保全すること。

(環境基本計画の策定)

第8条 市長は、環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、環境の保全と創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 環境基本計画には、環境の保全と創造に関する目標、それを達成するための施策、配慮の指針その他の必要な事項について定めるものとする。

3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民、事業者又はこれらの者の組織する団体(以下「市民等」という。)の意見を反映することができるよう必要な措置を講じなければならない。

4 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、第26条に定める堺市環境審議会の意見を聴かなければならない。

5 市長は、環境基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。

6 前3項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

(施策の策定等に当たっての措置)

第9条 市は、環境に影響を及ぼすおそれのある施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画に整合するよう配慮するものとする。

(環境影響評価)

第10条 市は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者が、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正な配慮を行うことができるよう必要な措置を講ずるものとする。

2 市長は、環境の保全と創造を図るため、前項の事業者に対して必要な指導又は助言を行うことができる。

(規制の措置)

第11条 市は、環境の保全と創造を図るため必要があると認めるときは、市域の特性、規制の効果及び影響等を考慮し、必要な規制の措置を講ずるものとする。

(経済的措置)

第12条 市は、市民等が自ら行う環境への負荷の低減に係る施設の整備その他の環境の保全と創造に資する活動を促進するため、特に必要があると認めるときは、経済的で助成を行うために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 市は、環境の保全上の支障を防止するため、事業者又は市民に係る適正で公平な経済的負担の措置について、調査及び研究を実施し、特に必要があると認めるときは、その措置を講ずるよう努めるものとする。

(苦情の処理等)

第13条 市は、環境の保全上の支障に係る苦情について、迅速かつ適正な処理に努めるものとする。

2 市は、公害に係る健康被害の救済を図るため必要な措置を講ずるものとする。

(施設の整備等)

第14条 市は、公共下水道、廃棄物の処理施設等環境の保全に資する施設の整備その他の環境の保全上の支障を防止するための事業の推進に努めるものとする。

2 市は、地域の特性及び環境資源を活かした環境を創造するための施設の整備に努めるものとする。

(資源の循環的利用の促進等)

第15条 市は、環境への負荷を低減するため、事業者及び市民による資源の循環的利用、エネルギーの効率的利用及び廃棄物の減量の促進に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(環境に関する教育及び学習の振興等)

第16条 市は、市民等が環境の保全と創造についての理解を深め、自発的な環境への負荷の低減その他の環境保全活動を行う意欲が増進されるよう、環境に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実その他の必要な措置を講ずるものとする。

(自発的な活動の促進)

第17条 市は、市民等による自発的な環境の保全と創造に資する活動が促進されるよう、技術的支援その他の必要な措置を講ずるものとする。

(自主環境管理の促進)

第18条 市は、事業者が、その事業活動に伴って生じる環境への負荷を低減するために行う環境保全に関する目標の設定並びに達成状況の評価及び検証の自主的な実施が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(情報の提供)

第19条 市は、市民等の環境の保全と創造に関する活動を促進するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ、環境の保全と創造に関する情報を適切に提供するよう努めるものとする。

(市民等の参加等)

第20条 市は、市民等の参加、協力及び連携により環境の保全と創造に関する施策を効果的に推進するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(監視体制の整備等)

第21条 市は、環境の保全と創造に関する施策を適正に実施するため、環境の状況の把握に必要な監視、測定及び検査の体制の整備に努めるものとする。

2 市は、環境の保全と創造に関する施策の策定に必要な調査及び研究に努めるものとする。

(推進体制の整備)

第22条 市は、環境の保全と創造に関する施策を推進するための体制を整備するものとする。

(財政上の措置)

第23条 市は、環境の保全と創造に関する施策を推進するため必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(年次報告)

第24条 市長は、毎年、環境の状況及び市長が環境の保全と創造に関して講じた施策について報告書を作成し、これを公表しなければならない。

第3章 地球環境保全に関する施策

(地球環境保全に関する施策)

第25条 市は、地域の環境の保全と創造を通じて地球環境保全に貢献することを基本とし、市民等と協働して地球環境保全に関する施策を推進するものとする。

2 市は、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。

第4章 堺市環境審議会

(堺市環境審議会)

第26条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、本市に堺市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、環境基本計画その他環境の保全と創造に関する基本的事項を調査審議する。

3 審議会は、前項に規定する事項に関し、市長に意見を述べることができる。

4 審議会は、委員25人以内で組織する。

5 委員は、本市議会議員、学識経験者その他市長が適当と認める者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。

6 委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。

7 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。

第5章 雑則

(委任)

第27条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成9年4月1日から施行する。ただし、第4章及び次項の規定は、平成9年6月1日から施行する。

(堺市環境審議会条例の廃止)

2 堺市環境審議会条例(平成6年条例第15号)は、廃止する。

(平成29年6月26日条例第31号)

この条例は、公布の日から施行する。

堺市環境基本条例

平成9年3月28日 条例第13号

(平成29年6月26日施行)

体系情報
第11編 境/第1章
沿革情報
平成9年3月28日 条例第13号
平成29年6月26日 条例第31号