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7.課題と対策

更新日:2012年12月19日

今回の学童を中心として発生した大腸菌O157による集団下痢症は、今までに例のない大規模のものであったこと、従来の食中毒と異なり二次感染患者が多数発生したことから当初随所に混乱があり、様々な課題を残した。

1) 課題

(1)危機管理体制

大腸菌O157による食中毒は、すでに岡山県邑久町、岐阜市、河内長野市で集団発生していたため、6月初旬より関係者に対する食品衛生講習会の開催、集団給食施設に対する発生予防の啓発を行う一方、万が一発生した場合の対応についても、休日における緊急連絡体制はできていると考えていた。
しかしながら、本市における過去の発生状況、市内の食品業界の規模、学校給食が自校調理であることから、今回のような大規模な集団発生は想定していなかったため、食中毒患者、二次感染者等を含め約10,000名に及ぶ患者数に直面し、その対応は困難を極め、危機管理体制の甘さが指摘された。

(2)医療機関の確保

医療機関への受診者は7月13日(土曜)、14日(日曜)、15日(月曜)に急激に増加し、特定の医療機関に患者が集中した。
また、重症患者が多かったため、一人の診療時間が長く、3時間から5時間の診療待ちという状況であった。
対策本部は、市立堺病院、急病診療センタ-の診療体制の強化と24時間診療体制の確保、関係医療機関へ受入れの要請を行うなど全力を尽くしたが相当混乱が生じた。
また、同時に多くの入院患者が発生したため、市内の病院では対応できず、約4割の患者が市外の病院へ入院となった。
空きベッドの確保については、大阪府救急医療情報センタ-が中心となり、近隣の各医療機関の積極的な協力が得られたため、混乱の中でも比較的円滑に対応できたと考えられる。
しかし緊急時においても、円滑な対応を図るための体制づくりを行い、関連機関との連携をより密にしておく必要を感じた。

(3)マンパワーの確保

大規模で二次感染をともなう大腸菌O157による食中毒は、先ず医療の確保が最優先であるが、原因究明のための各種調査、市民への情報の提供、二次感染予防のための諸施策等を迅速かつ円滑に推進するためには、マンパワー(人員)の確保が不可欠である。
阪神淡路大震災以降、各自治体の相互の支援体制の気運は高まり、早い時期から人的支援の申し出を受けたが、極度の混乱状態の中で、「具体的に何をしてもらうのか」「調整を誰がするのか」「宿泊先は」等の受入れ体制を整えるのに数日を要し、せっかくの申し出も当初受け入れ困難であった。
今回、国をはじめ大阪府、大阪市、東大阪市等全国各自治体の専門職の応援を受け対応した。

(4)情報の収集と処理

食中毒発生の情報は、医師から食品衛生法第27条による発生届によることとなるが、医療機関も当時相当混乱していた中で、実際の届出は少なかった。
はじめは行政側から定刻に医療機関へ電話で発生患者数を聞きとり、患者数の増加にともない医師会の協力を得てファックスによる報告を受けた。入院患者の情報については、各病院からのファックスによる報告を受けた。
今回の集団発生は、膨大な患者数であったこと、約24%が複数受診していたこと、また、食品衛生監視員、保健婦、教育委員会職員等の調査で、各調査での有症者の整合性を図ったことから、患者実数を把握するのに非常に手間取った。
今後は、大規模な集団発生にそなえて調査方法、処理の手順をマニュアル化しておく必要があるとともに、コンピューターの有効活用および情報処理技術者の育成も不可欠である。

(5)マスコミへの対応

今回の集団発生は、世界的にも類をみないものだっただけに、市民の関心が学童集団下痢症に集中し、事態の対応に混乱している時期にマスコミへの対応が負担となったことはいなめない。
今後、さらに円滑な広報体制を整え、人権に配慮し対応する必要がある。

(6)人権問題

大腸菌O157は今までの食中毒と異なり、二次感染をともなうことから市民の不安が広がるなか、過剰ともいえる反応がみられた。
症状のあった学童が回復後「感染するから」といじめられたり、感染者でない人たちも堺市民ということで「旅館、ホテルから宿泊を断られた」「勤務先から退職、休職を言い渡された」等人権にかかわる事態が発生した。
その背景には、事態が大規模であり、二次感染の防止の観点からあらゆる施策を打ち出し、マスコミもそれを連日大きく取り上げるといった中で、大腸菌O157に対する過剰な防衛心が先行したこと、伝染病予防法により指定伝染病として指定されたことがあげられる。
いずれにしても今日取り組まれている人権問題に一つの課題を提起したと言える。

2) 対策

今回の学童を中心とした集団下痢症は、未曾有の患者発生により、一連の対応の中で混乱が生じたため、行政の危機管理の脆弱性が指摘され、実際にさまざまな課題を残した。
危機管理は通常「不測の緊急事態が生じた際、組織的対応を通じて被害を最少限におさえ、可及的すみやかに住民等関係者の不安を解消させる。」ことにあるが、今回の経験から危機管理体制の整備と相まって、危機を発生させないための体制づくりに重点を置いた。

(1)組織の見直し

食中毒の予防は食品衛生監視員の主たる業務であるが、厳しい財政状況の中で大幅な増員は困難であり、抜本的な組織の見直しにより監視指導体制の一元化、効率化を図った。
従来、監視業務の企画調整は衛生部環境衛生課で行い、監視指導の実務は、各保健所に監視員を配置し行ってきた。
平成9年4月1日から各保健所の窓口業務の職員以外の監視員をすべて堺保健所に集中し、食品衛生課を新設して、指揮命令系統の整備、広域機動性の確保を図った。
さらに、集団食中毒の予防の重要性に鑑み、専任の集団給食施設食品衛生対策担当を配置し、集団給食施設等の監視指導体制の強化を図った。

(2)情報提供の迅速化

近年、食品流通機構の発展、貿易の自由化にともない、今後食品の流通はますます大型化され、かつ広域化される傾向にあり、新たな感染症の侵入、有害物質混入食品の流通も懸念される状況にある。
食品関係団体、集団給食施設、仕出し弁当製造業者等に対し、食中毒をはじめこれら感染症の発生状況、予防方法の周知、不良食品の使用禁止措置等の情報提供を迅速に行うため、ファックス通信網の整備を図った。

(3)食中毒及び感染症等対策基本指針の作成

今回の学童集団下痢症を教訓に基本指針を策定した。まず食中毒等の発生予防に重点を置き、平常時の対策として、今まで個々に所有していた情報を共有し、事件発生の予知、予防を図るため「食中毒及び感染症等予防対策委員会」を設置することとした。
また食品衛生の監視指導を強化し事故の発生予防に努めるとともに、様々な広報媒体を使って関係機関や市民にすみやかに情報提供を行う。
さらに緊急時円滑な対応ができるよう、対策本部設置要領、検査体制等を整備した。
次に、散発事例についても、届け出、報告、調査方法等の基準を定め、責任体制を明確にした。
集団発生時の対応については、初期対応として対策本部を設置し、医療の確保、原因究明、情報の収集と管理等の指針を示すとともに、対策本部の役割、担当者、業務内容を明確にし緊急時の万全を図る。

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