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2009年度 活動記録

1. マーシャル諸島の概要

マーシャル諸島の環礁

マーシャル諸島の環礁

マーシャル諸島の海

マーシャル諸島の海

マーシャル諸島は日本の南東約4600キロに位置する島国である。首都はマジュロで、200万平方キロの広大な海域にある29の環礁と5つの独立した島から構成されている。陸地の総面積は181平方キロメートルで、堺市の約1.2倍の大きさである。総人口は約6万人でそのうち約4割が15歳以下であり、近年著しく人口の増加がみられている。公用語はマーシャル語と英語で、日常会話はマーシャル語が使用されている。また、日本によって統治されていた歴史があるので、発音や意味が日本語に由来すると想像されるマーシャル語がある。

島民の多くはキリスト教(プロテスタント)を信仰している。貨幣経済と伝統的自給経済が混在しており、国内の生産性は高くなく、生活必需品の多くを輸入に依存している。また、米国や他の国々からの援助を受けており、国家の歳入の約9割が海外からの援助という状態である。

2.マーシャル諸島の課題

現地の若者との意見交換会

現地の若者との意見交換会

インターユース堺では2009年度よりマーシャル諸島の現地協力団体と協働で、島の歴史や文化の次世代への継承を支援する「住民組織による自然・歴史・健康に関する次世代継承支援事業」を実施している。初年度である2009年度は現地の人々との交流を深め、島が直面する課題について調査を行った。また、海外派遣団員ができる貢献活動とはどういうものであるかを話し合った。現地でのフィールドワークや市民団体との交流、行政機関等への訪問などを行った結果、次のような課題が判明した。

1、環境問題

マーシャル諸島国内では、ゴミに関する教育・設備が不十分で、道端や海岸にたくさんのゴミが捨てられていた。人々のゴミに対する意識も低く、ゴミ問題をより一層深刻なものにしている。

また、平均海抜が2メートル、最高地点でも6メートルしかないので、近年の気候変動などによる海面上昇の影響を大きく受けている。右の写真は海面上昇により、浸食された海岸の様子である。このまま海面上昇が続けば、今世紀中にマーシャル諸島の島の80%が海に沈むといわれている。

海岸に捨てられたゴミ 海岸に捨てられたゴミ 海岸侵食 海岸侵食
海岸に捨てられたゴミ
海岸浸食

2、グローバル化と伝統文化の衰退

マーシャル諸島の人々は自然と調和した生活を送ってきた。人々はカヌーに乗り漁に出かけ、ココヤシの実などを採取し、自給自足の生活を営んできた。しかし、近年の国際化とグローバル化の進展により、島には海外の文化が流入してきた。生活が便利になる一方で島独自の伝統的な文化が失われつつある。食文化も大きく変化した結果、食事の栄養バランスが損なわれ生活習慣病が増加するなどの新たな社会問題も発生している。

3、情報の共有

マーシャル諸島では、過去の出来事や歴史などを文字や書籍を使って伝承していくという習慣がない。そのため、島に住む多くの人々は、島がかつて日本による統治下にあったことや、米国による核実験で多くの人々が被ばくした歴史についてほとんど知らない。

4、人々の自立意識

マーシャル諸島は米国をはじめとする多くの国からの資金援助を受けている。その結果、島民は海外からの援助に依存してしまい、自分たちが直面している課題を自力で解決しようという意識が低くなってしまっている。今後、マーシャル諸島の人々が国際社会の中で生きていくためには、自立意識の確立が必要不可欠である。そのためには、マーシャル諸島の人々が自分たちの国や文化、取り巻く環境について知り、それを共有していく必要がある。

3.マーシャル諸島の市民団体

私たちは今回の海外派遣で、マーシャル諸島が直面する課題に取り組む市民団体と交流を持った。ここで、それぞれの団体とその活動について紹介する。

1、Enewetak, Rongelap, Utrik and Bikini (ERUB エラブ)

マーシャル諸島では米国によって1946年から1958年にかけて67回の核実験が行われた。ERUBはマーシャル諸島の言葉で「砕かれた・壊された」という意味があり、核実験の被害者によって設立され、被ばく体験の継承と被ばく者の尊厳回復のため活動を続けている。ERUBという団体名は米国が核実験により核被災を認定している4つの環礁の頭文字を合わせている。これらの環礁では、多くの人々の生活や生命が奪われた。被ばくした人々、そして次世代は今なお心と身体の痛みと戦っている。それでも、世界平和への思いが一人の心に届くように、世界に届くように、草の根の活動を続けている。

2、WAAN AELON IN MAJEL (WAM ワム)

マーシャルカヌー

マーシャルカヌー

WAMはマーシャル諸島で伝統的なカヌー作りを青少年に伝えるNGO団体。団体名はマーシャル語で「マーシャル諸島のカヌー」という意味がある。カヌー作りは島にとって重要な文化である。島民が一丸となりカヌー作りや、カヌーの乗り方を父親から教わる過程で、社交性や常識も受け継がれてきた。カヌーを作ることは社会的に認められるという意味合いもあり、伝統的な文化には欠かせないものである。

ここでカヌー作りを覚えることは、カヌーを通して環境に意識を向けるきっかけとして期待されている。自分の力で木を切り、風の向きと潮の流れを読み、波に乗って進むカヌーは、文化の重要性と環境問題の双方から若者の感性を豊かにすることができる。WAMに所属する青少年は、互いに切磋琢磨して多くのことを学び合っており、ここでの経験が若者同士の活発な活動の輪を広げている。

3、Marshall Islands Conservation Society(MICS マーシャル諸島保全協会)

現地の環境問題啓発のポスター

現地の環境問題啓発のポスター

マーシャル諸島保全協会は、マーシャル諸島で活動実績をあげる初の環境NGO団体。私たちが宿泊したロバートライマーズホテルの一階にあり、事務所には海洋写真や絶滅危惧種の鳩の写真を飾っていた。マーシャル諸島の人々の環境意識を高め、環境保全と自然資源の持続可能なありかたを支援し、生物多様性の保護に貢献している。2004年から活動を始め、ゴミ問題・リサイクルシステムの改善(ゴミ回収システム)、離島とのラジオネットワーク、生物多様性と食の安全(珊瑚礁、鳥類の保護)、気候変動と海面上昇への対処(海岸浸食など)に着実に成果をあげている。

4、Youth to Youth in Health (YTYIH ユース・トゥ・ユース・イン・ヘルス)

YTYIHのスタッフ

YTYIHのスタッフ

YTYIHは1986年に故ダーリン・ケジュ・ジョンソンがマーシャル諸島の急激な人口増加に伴う諸問題を危惧し創立したNGO団体。創立当時は人口増加に伴う10代の妊娠が問題視されていたマーシャル諸島で、若者に正しい家族計画の知識を与えることが目標の一つであった。現在は10代の妊娠問題だけでなく、HIVの感染や薬物乱用、自殺などの問題について取り組んでいる。このような問題を解決するための知識や経験をラジオ放送、演劇や授業で発信している。

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